Wizpyがダメすぎる

2008年3月上旬、TurboLinuxの発売する、wizpy( http://www.wizpy.jp/ )が大幅値下げされました。
4GBモデルが 29,800円 → 9,800円と、実に3分の1、2万円の値下げです。
前から気になっていたガジェットだったので、4GBモデルをちょっと買ってみました。
ですがこのダメっぷりといったらもう。
購入を考えている方は、別の物を選択するべきだと思いますよ。


wizpyとは

携帯音楽プレイヤー(FMラジオや動画の再生、録音等も一応可能) + TurboLinuxブートメモリー

詳細は http://www.turbolinux.co.jp/products/wizpy/index.html

コンセプトは非常に面白い。というか待っていましたよ長い間。しかし、つっこみ所が多すぎる。

携帯メディアプレイヤーモード

全体的に

画面解像度が荒い。曲名は読めるが、iPodや携帯電話などほかのガジェットに比べると汚いといわざるをえない。

UIがダサい。スプラッシュ時に泡のムービーが表示されたり、メインメニューが変な6角形だったり。

なぜUIデザイン担当者がもっとフツーの感覚を持っていなかったのか理解に苦しむ。

ヘンテコなデザインは別に入っていてもいいけど、それを強要するのはいかがかと思う。人に見せたくない。

起動に時間がかかりすぎる。

ボタンに触ってから、電源投入され視聴可能になるまで十数秒かかり、遅すぎる。

iPod Shuffle では4秒ぐらいかかり、それでも遅いと感じていたがそれ以上にイライラする。

フォントがダサく、解像度の低さとアンチエイリアスの無さが影響しているのかどことなく中華チック。ヒラギノメイリオなど、美しい標準フォントを搭載するOSが多い中、これはあまりにも恥ずかしい。

電池の持ちは、僕の利用パターンでは全く問題なかった。スペック上では10時間持つそうな。

メディアファイルの転送は専用のソフトウェア等は不要で、ファイルをコピーするだけで再生可能となる。シンクプログラムを自作したりする人には大きなアドバンテージとなるだろう。実際、僕は非常にうれしい。

一応、配色テーマを青・赤・緑から選べる。が、スプラッシュ画面やボタンLEDは青のまま(黒モデルの場合。他は知らない)なので、テーマを青以外に変更するとけっこうダサい。結局青テーマしか使いものにならない。

発光部が全部赤になり、全体的に黒赤配色になればけっこうかっこよさそうなのに。

ボタンの長押しをけっこう使う作りとなっていて、マニュアルを読まなければ使いこなせない。キーガイドは一切画面に表示されない。

音楽再生

ID3タグでのフィルタリングには対応していないが、メディアファイルを入れたフォルダツリーが再現されるので、フォルダ名で整頓可能。好みの分かれる所だと思うが、僕は好きだ。

対応フォーマットは、MP3、OggVorbis、WMAAACが使えないのはデメリットかもしれない。OggVorbisで音楽データをため込んでいる、僕のような人にはぴったりだと思う。

音質は…OggVorbisしか再生していないが…ほどほど、と言える。若干高音の再現性が悪いと思うが、地下鉄の通勤でイヤフォンで聞くなら問題は無い。

僕の所有しているプレイヤーで番付をすると、

Zaurus SL-C3000 > wizpy > iPod Shuffle 2世代 > W-Zero3

こんなだろうか。

プレイヤーのデザインは悪くないと思う。グラデのかかった、WindowsMediaPlayerを連想させるデザインだ。

グラフィックイコライザ機能有り。プリセットがいくつかと、ユーザーEQが1つ使える。

動画再生

XVIDしか使えないらしいので、画面解像度の低さもあいまって使い物にならない。デモ動画も極めてショボい。

せめて、Mpeg4,Mpeg1,FLVぐらいは再生してほしいところ。

FMラジオ

電線の下とかでなければ十分使える。いわゆる普通のFMラジオ。イヤフォンをアンテナとして使うようだ。
基本的に使わない機能なので、興味がない。

ボイスレコーダー

mp3形式で録音可能。ビットレートは16Kbps〜192Kbpsまで設定可能。

内蔵マイク、外部マイク、ラインインの3系統が録音可能。今のライフスタイルでは録音を行う機会が無いが、バンドのリハーサルを録音したりするのには便利じゃないかと思う。
イヤフォンとラインイン端子が共用のため、イヤフォンが刺さっている場合は自動的にラインインとして録音しようとしてしまう。明示的に入力バスを設定することはできないようだ。

入力感度設定は無い。

無音状態が続くと自動的に別ファイルとして保存する機能有り。無音状態と判断する閾値と、その長さは設定可能。

スライドショー

画像ファイルを閲覧することが出来る。Jpeg画像に対応しているようだ。

ズーム可能。画像切替時間を設定可能。

音楽再生と同時に使うことはできない。

画面がショボイためたいして使えない…と思いきや、意外にキレイに表示可能。

画像サイズが大きいと表示に(縮小に?)時間がかかる。2MBぐらいのJpeg画像で試したら、10秒かかった。
スライドショーを行う場合は適切に画像サイズを縮小する必要があるようだ。

画像はカットで切り替わる。フェードやズームは無い。

時計・アラーム

プレイヤー時は、上部に時計が表示される。12時間表示のみで、24時間表示にすることはできなかった。

スリープモードがあり、スリープ時間を15〜120分の間で設定可能。結構便利かもしれない。

1系統のアラームを設定可能。イヤフォンでの運用を前提としたシステムでどれほどの便利さがあるかは不明。

wizpy OS モード

このガジェットの最大の売りである、wizpy OS (要はTurboLinux)の起動について。

本体にUSB端子があり、PCに繋ぐとUSB-CDもしくはUSB-HDDとして認識される(設定可能)。僕の持っているPCからは、すべての機種でUSB-CDとしてブートできた。このへんはすばらしい。一応、ブート用のCD-ROMがついてきたが、使うことはなかった。GRUBからでも起動できるようだ。

ただ、僕の持つAthron64x2マシンではブート途中でハングアップしてしまい、2台中2台で起動できなかった。

また、他にAthron(32bit)のPCでも試してみたが、このマシンはディスプレイが故障していてリフレッシュレートが70Hz以上でないと画面を表示できない。wizpyは強制的に1024x768@60Hzで表示しようとするらしく、画面を表示できなかった。

ランレベル3で入ってから、xorg.confを書き換え、startxすればなんとか表示はできた。だが、再起動したら設定が戻ってしまった。使えない。

さらに、hpのノート Pavirion tx-1000(Turion64x2) でも試してみた。こちらは難なく起動出来たのだか、1280x800のワイドディスプレイには対応していないらしく、1024x768以上では表示できなかった。

40秒程度でログイン画面が表示され、CDブートのLinuxと比べると起動時間は十分実用的。USBメモリから起動するLinuxの類は他に試したことは無いが、他の物と遜色ない起動速度ではなかろうか。

とりあえず起動は出来たので、ちょっとさわってみた。

まず、端末ウインドウを探してみたが、メニューの中には見当たらない。konsoleは入ってるけど、いちいち「ファイル名を指定して実行→konsole」と打たないといけない。

FirefoxThunderbirdOpenOffice.org、RealPrayer、adobe reader等がプリインストールされている。

Firefoxは、YouTubeの動画はそのまま見ることができた。また、KonquerorでもYouTubeは見れた。

日本語入力はATOKanthyは/usr/share に入ってはいるが、日本語入力の切り替え方がわからなかった。

TurboAudioRipperというCDリッピングツール、ターボリップというDVDリッピングツールがインストールされている。使い勝手は不明。

Turboメディアプレイヤーというソフトがインストールされているが、要はKaffeine。中の人はxine。

Gimp,pidgin,rhythmboxぐらいは入っていてほしかった。個人的には、その他にInkscape,ナントカParted,pyQt,JavaSDK,Apache,PHPがほしいところ。

また、less,vi,vim,nano,crontab,gcc等のコマンドを実行してみたが、command not found となった。

で、インストールしようと思ったが、パッケージダウンロードのアプリ(Synapticのような)が見当たらない。

どうやら、この wizpy OS にアプリケーションをインストールする場合は、

  1. Turbo Linux にユーザー登録(有料)
  2. Turbo Linux webサイトより、独自形式のパッケージ(ページ内では「プラグイン」と呼ばれていた)をダウンロード
  3. インストール

という手順を行わなければならないらしい。お金を払うほどではないので、ソフトウェアのインストールは行っていない。

使用するにあたり料金の発生するLINUXなんて本末転倒ではなかろうか。一体どんな物好きがお金を払っているのか、非常に興味がある。

掲載されているパッケージも極めてショボく、よくあるLINUXのパッケージ管理システムのような魅力は全く無い。詳しくはここで見られる。
http://www.wizpy.jp/plugin/

基本的なウインドウデザインをWindowsに頑張って似せようとしている感じが痛い。

起動時に、wizpy自体がオーディオデバイスとして認識される。

総合的に見て、使い物にならないOSといわざるをえない。他のlinuxと比べて、ベンダーはwizpy OS の優位性って一体何だと思っているんだろうか。

せめて、いろんなマシンで起動することが確認できれば、ソフトのビルド等試してみる気にもなるのだが。

パーティション

※曲を250曲ほど入れた状態

総評

まず、コンセプトが非常におもしろい。ポータブルオーディオプレイヤーなのに、USB-CDとして認識され、ブートが可能。こういったガジェットを待ち望んでいた。

ハードウェアは悪くないものになっていると思う。4GBメモリ、録音機能、ラジオなどをあの大きさに詰め込んで1万円を切る価格。質感も美しく、音質も悪くない。重量も実用的。他社メーカーの商品と比較しても、引けをとらない物になっていると思う。

しかし、そんなすばらしいコンセプトとハードウェアをすべてぶちこわしにしているのがソフトウェアの悪さだ。産業廃棄物並に使えないOSのおかげで、ハードウェアチームの仕事を台なしにしている。

「世界中のPCが私のPC」というコンセプトらしいが、私が使っているPCの中では、ディスプレイの解像度の適合しないぼやけた状態でやっと起動できたのが1台。その他のPCはGUI画面さえ表示されなかった。UbuntuFedoraは普通に使えているので、問題は明らかにwizpy OS にあると言える。

ハードウェアチームのことを思うと、不憫でならない。

購入を考えている方はやめておいた方がいいかもしれない。